会社員から半農半Xに安全に移行する方法

前回、『「半農半X」という生き方を1年実践してわかったこと』を4回にわたってお伝えしてきました。

Twitterでアンケートをとったところ「半農半Xが気になる…」という方が多いことがわかりました。

この結果を踏まえ、今回は現在会社員の人が半農半Xになろうとした場合、どんなことに気をつければリスクを減らせるのかについて、自分の経験を交えつつまとめてみました。今回も全4回にわたってお伝えしていきます。半農半Xを目指している人の行動のきっかけに慣れば幸いです。

半農半Xについておさらい

半農半Xとは、自給的な農業と自分の好きな生業Xを組み合わせてライフスタイルのことです。

生活費の多くを占める食費を自給的な農業で補うと、稼がなければならないお金を抑えられます。そうすることでできた余裕を活かし、自分のやりたい仕事で小さく稼ぎ、精神的に豊かに生きられるライフスタイルです。半農半Xが軌道に乗れば「なぜ自分はこんなことをしているんだろう?」という仕事とおさらばできるはずです。

この記事を書いている僕の”生業X”は、シェアハウス「ほくほく邸」の運営とWebライター、そして小さな営農。みてもらうと分かるように、生業Xは一つである必要がなく、楽しいと感じるものであれば何でもいいのです。

半農半Xという生き方を1年実践しましたが、精神的に本当に豊かになりました。もっと多くの人にこのライフスタイルを実践してほしいと心から思っています。

第一章 半農半Xは誰にでもできる

半農半Xと聞くと、なんだか能力のある人でないとできそうもない…と思ってしまう人も多いかもしれません。でも、実は半農半Xは誰でもできるんです。多くの人が思い描く「半農半X」というのは、半農半Xの究極の理想形。それが大きな間違いなんですよね。

なんでもいきなり完璧なモノは作れません。陶芸未経験のあなたが、いきなりきれいな器を作ることはできないはずです。誰でも最初は歪んだブサイクな器を作るところから。やったこともないのに、いきなり理想的な生活を実現できるはずがありません。最初は下手くそで十分。数年掛けて徐々にうまくこなせるようになるイメージが大切です。

世界では現在でも自給自足をしている民族もいる

釣ったアジと畑のネギで作ったなめろう

アメリカやカナダでは、自給自足をしている「アーミッシュ」という人々がいます。このアーミッシュと呼ばれる人々は、ドイツ系移民を中心とした宗教集団です。電気を使わず、移動も車ではなく馬車を使用するそう。アーミッシュは細かい派閥に分かれるそうですが、総人口はおよそ20万人だそうです。現代でもそんな人達がいるんですよ。

アーミッシュとは違い、半農半Xは宗教的な思想がありません。というか、家庭菜園やっててなんか別の仕事していれば、それはもう半農半Xです。だから、僕らは適切なところで電気を使い、石油を使い、お金を使って楽ができます。半農半Xが敷居の高いものだと考えているのならそれは間違いです。作物が思ったよりもできなかったのであれば、お金で食べ物を買う選択もできる強みがあります。

世界基準で見れば、アーミッシュ以外にも自給自足している人々がいます。昔は自給自足が当たり前だったんですから、別に不思議な話ではありませんよね。逆に言えば、現代ではお金で何でも手に入るようになったから、わざわざ自分で農作物を作る必要がなくなったわけです。

僕ら半農半Xは、人類が来た道を戻ろうとしているだけ。しかも、知識はネットで調べるというズルいこともできちゃいます。柔軟に文明の利器やエネルギーを使って、気楽なライフスタイルを作るという意識が大切です。

半農半Xは宗教ではなくライフスタイルです。強制されてやるのではなく、より柔軟で楽しい生き方を自らの意思で模索し、理想を目指すのが半農半Xなのです。特定のなにかに縛られる必要がなく、人それぞれ理想とするライフスタイルを目指せばオッケーなんですよ。

昔の人はみな複業をしていた

ここ日本でも、昔は半農半Xのようなライフスタイルが一般的でした。江戸時代のころは農民も農業だけでは自然災害や天候不順に100%身を預けることになるため、リスク分散のために魚売りや奉公人(召使い)といったアルバイトをしていたそう。

江戸時代の人々の暮らしがいいものだったのかはわかりませんが、少なくとも僕らの代まで生活をつないでくれたという実績があります。昔の農民は「百姓」と呼ばれていましたが、百姓というのは「百=たくさんの / 姓=苗字」という意味です。農民はそれぞれ違うことをやっていたと言えます。

昔は苗字というのは職業を表すものでした。農業をやりながら鍛冶屋をしたり、桶屋をしたり、大工をしたりと色々な役割があったそうです。昔の人たちはみんな「半農半X」だったんですね。ちなみに僕は中田という苗字で「中央部の田」という意味があったそう。米専業農家だったのかな?

税金や家賃を払う分+αを稼げる生業があればそれでいい

僕は嫁さんとシェアハウス運営がメインの生業

半農半Xにあこがれている人のに二の足を踏んでいる人の多くは、たくさんのお金を稼ごうとしすぎです。これは、言い換えれば『お金で解決しようとするクセがある』と表現できます。思考のクセがあるせいで、多くのお金が必要なのだと勘違いしてしまい、その結果不安になってしまって前に踏み出せないのです。

半農半Xになるための大事なステップとして、お金に頼らない訓練が必要だと僕は思います。仕事の日にコンビニ弁当を買って夕食を済ませているなら「自炊に切り替える」なんかが訓練のいい例ですね。お金ではなく、自分の力で解決できる部分を少しずつ広げていけば、お金はそんなに掛からなくなってきます。現代人はそれほどお金で解決する思考になってるんですよね。

イメージしにくいという人のために、いくつか例を紹介しておきましょう。

お金に頼らない訓練の一例)
ワイシャツをクリーニングに出す→自分でアイロンがけをする
自転車のタイヤがパンクして自転車屋で修理してもらう→修理用のパッチを買ってきて自分で修理する
魚の切り身を買ってきて調理する→丸々1匹買ってきて捌く
車屋でスタッドレスタイヤに交換してもらう→ジャッキを使って自分で交換する

自分でなんでもやるようになると、道具を買うお金は必要になりますが、長期的に見ると圧倒的に費用は抑えられますし、何より技術が身につきます。

お金が必要な場面というのをしっかりと理解していれば、稼がなければならないお金というのはごくわずかになってきます。税金や年金、健康保険…家賃…水道光熱費なんかがかかってくるコストとして挙げられますが、人の少ない田舎に住めば家賃も月1万円くらいに抑えられます。これらをざっくり計算すると月10万円でもお釣りが来るはずです。これなら週3~4日のアルバイトでも十分まかなえます。

一点注意するとすれば、アルバイトは気楽にお金を稼げる手段ではありますが、それだけではなかなか自立した生活は送れません。アルバイトでずっと暮らしていくと考えるのではなく、余白の時間で自分の理想とする”生業X”を少しずつ育てていくという、長期的なプランニングが大切です。

どちらにせよ、半農半Xでの生活の不安を減らすには、自分の能力を高め、お金の力でごまかさない力をつけることが大切です。はっきり言ってしまうと「自炊するのがめんどくさい…」と考えてしまうタイプの人は、半農半Xの生活は長く続きません。今の生活を続けながら『できるだけ自分の力で生きる訓練』をしてみるのが、半農半Xライフ実現のための第一歩だと、僕は思います。

第二章に続く…