炭素循環農法のやり方を世界一わかりやすく解説してみた

今年から僕がチャレンジしている、キノコ(微生物)で野菜を育てる「炭素循環農法」

ブラジル発祥(日系ブラジル人の林さんが提唱者)のこの農法を、自分なりにいろんな書籍やネット上を読み、実践してみた上で、炭素循環農法を日本でどのように実践すればスマートなのかを整理し、世界一わかりやすく解説した(つもり)の記事です。

この記事では、筆者の希望的観測や確証バイアスなどが多数含まれていますが、この考え方で今の所僕の畑はうまくことが進んでいます。この記事が「これから”炭素循環農法”をはじめてみたい!」と思った方の参考になれば幸いです。少し長くなりますが、ラクに畑を立ち上げるヒント満載ですのでぜひ最後までチェックしてみてください。

炭素循環農法とは?

炭素循環農法の名前だけを聞くと、めちゃくちゃ難しいイメージを持ってしまいますよね。ですが、炭素循環農法は名前ほど難しい農法ではないんです。そのシンプルさから「たんじゅん農法」とも呼ばれるほど。

「ややこしいことはいいから、どういう農法なのか知りたい!」という方に向けて、ザクッと言うと炭素循環農法は、こんな感じです

炭素循環農法は「キノコ菌などの微生物に野菜を育ててもらう農法」です。野菜を育てるというよりも、畑の土の中にいる「微生物の生態系」を豊かにし、微生物に野菜を育ててもらうという農法なのです。

炭素循環農法のロジック

炭素循環農法の理論的な部分を解説していきますが、どうしても長くなってしまうので「ロジックなんてどうでもいい!やり方だけ教えろ」という方は、読み飛ばしてやり方の部分だけ読んでみてください。ただ、ロジックは理解しておいたほうが成功しやすいと思います。

野菜が育つために必要な要素

ロジックについての説明の前に、まだ畑で野菜を育てたことがないという人のために、野菜がどうやって育つのかについて簡単に解説しておきましょう。「そんなこと知ってるぜ」って人は読み飛ばしてくださいね!

野菜が成長するには、窒素(N)、リン酸(P)、カリウム(K)などの栄養素が必要不可欠です。これら3つは3大栄養素とも呼ばれます。これは中学校で習った記憶があるという方も多いのではないでしょうか。この栄養素を人為的に畑に入れるのがいわゆる「肥料」と呼ばれるものです。

窒素、リン酸、カリウムのどれかが足りないと植物はうまく育ちません。枯れることはないにしても、どこかに障害が出てきてしまうのです。その他にもわずかに必要とする微量元素などの要素もありますが、3大栄養素の影響が飛び抜けて大きいです。

鶏糞や牛糞、植物の堆肥などの有機肥料を使った「有機農法」。空気中の窒素からアンモニア合成した化学肥料を用いた「慣行農法」など、細かく分ければもっとたくさんの農法がありますが、いずれの農法でも、栄養バランスが悪いと野菜の健康状態が悪くなり、最悪の場合枯れてしまいます。

野菜が育つのには、これまでお伝えしたような理屈があるわけですが、自然界では肥料を入れなくてもグングンと雑草や樹木は育っていきます。ここには様々な要因が関係しますが、そのうちの1つが「微生物」なのです。

微生物が野菜を育てるロジック

微生物がいれば、肥料を入れなくても野菜が育つロジックについて、できるだけわかりやすく解説していきます。

植物に必要な栄養素で最も代表的な「窒素(N)」を例にあげてみましょう。自然界において、窒素分はマメ科に代表される植物の根に共生する「根粒菌(こんりゅうきん)」が供給することで知られています。

根粒菌は、空気中に存在する窒素(N2)をアンモニア態窒素に変換できます。いわゆる「窒素固定」という機能です。根粒菌は植物から光合成で作られた「糖」「アミノ酸」「ビタミン」などを分けてもらい、そのお礼として、根粒菌が生産したアンモニア態窒素を植物に供給します。マメ科にはこのような共生関係を持つ「根粒菌」が存在しているのです。

空気中の窒素を土壌中に固定できるのは、マメ科の根に共生する根粒菌のみかというと、そうではありません。土壌中にも「窒素固定菌」と呼ばれる微生物がたくさん存在しています。窒素固定菌の中でも代表的なものが「シアノバクテリア」などです。

また、「リン酸」や「カリウム」などにも、植物と共生関係を働く微生物が存在します。それが「菌根菌(きんこんきん)」です。菌根菌はキノコの一種で、一般的なキノコとは異なり、「生きた植物の根」に共生する菌です。アーバスキュラー菌根菌なんかが有名ですね。

菌根菌は自身で栄養素を作るわけではありません。菌糸と呼ばれるものを伸ばし、リン酸やカリウムを代表とする土壌中の栄養を「蛇紋岩」「雲母岩」など、土中に含まれる微量な鉱石から集めることを得意としています。そして、集めたリン酸やカリウムを植物に分け与える代わりに、「糖」などをお礼としてもらって共生しているのです。(参考:botanyWEB

この辺りの土壌微生物に関しては、「図解でよくわかる土壌微生物の基本/監修:横山和成」を読むとよく理解できます。ただし、難しい話が多いので読んでると眠くはなります。

このように、様々な性質を持つ微生物が土壌中には無数に存在しています。しかし、いわゆる慣行農法(化学肥料や農薬を使う農法)では、農薬などの劇物のせいで、これらの土壌微生物を殺す形になってしまい、土壌微生物の量が極端に少なくなってしまいます。それが原因で、土壌中の微生物の生態系が崩れ、土壌中に特定の細菌やウィルスなどが爆発的に増加し、連作障害や病気などを引き起こすと考えられています。

炭素循環農法では、微生物が増えることで、土壌中の物質のバリエーションが増え、土壌中のまた別の微生物が増えるという良い循環ができるというわけです。

微生物を増やすには

では、微生物を増やすためにはどうすればいいのかというと、微生物の生態系の頂点になるキノコなどのエサになる「炭素分を多く含む資材」を畑に投入するが答えになります。

厳密に言うと「畑の土を『炭素40:窒素1』よりも炭素が多い状態を作る」が正解。炭素循環農法では、このような炭素と窒素の比率を持つ資材を「炭素資材」と言いますが、炭素資材は一般的な微生物には分解されにくいという特徴があります。炭素資材を分解できるのは「キノコ菌類(正確には白色腐朽菌)」で、キノコ菌が繁殖しやすい状況が『炭素40:窒素1』なのです。

炭素資材をたくさん土壌に入れると、自然と分解者であるキノコ菌類が増えてきます。なぜかというと、炭素資材に含まれるセルロースやリグニンといった物質はキノコ菌類にしか分解ができないからです。微生物というのは、必要がある場所には自然と増えてきます。

キノコ菌は炭素資材を分解する際に、特殊な酵素を出しタンパク質を作り出します。すると、キノコ菌類が分解した物質や分泌した物質をさらに分解する微生物が繁殖します。分解された物質をまたさらに分解する微生物が土壌中に増え、その結果、様々な微生物が増え始めるのです。

キノコ菌は、バクテリアとも仲が良いらしく、菌糸の成長を促進してもらえる環境にあるようです。(宮崎大学農学部HPよりこのように、キノコ菌を頂点とした微生物の生態系ピラミッドが構築され、土壌中にどんどんと微生物が増えるというわけです。

白いのがキノコ菌

また、炭素資材を入れていると、キノコ菌の菌糸がはびこってくるのが目でわかるようになります。キノコ菌以外の微生物が増えたかどうか…というのは肉眼では確認できませんが、微生物が増えてくると、土が「団粒化」して土がふかふかになってきます。

そのうちキノコも生えてきます。

ちなみに、キノコ菌類は、ダイオキシン(参考:宮崎大学)やネオニコチノイド系殺虫剤(参考:静岡大学農学部)なども分解できるという研究結果も出ています。安心できそうな野菜が出来上がりそうですね。キノコ菌すごい。

炭素資材の中でも廃菌床と呼ばれるものは、すでにキノコ菌が蔓延した状態になっています。キノコの菌床栽培に使った培地なので当然なのですが…。この廃菌床を土に入れると、かなりのスピードで微生物が増えるのを確認できます。↓の動画は、廃菌床と籾殻を入れて2ヶ月経たないくらいの状態ですが、粘土質の赤土で雨の翌日だったにもかかわらず、サラサラで団粒化されています。

団粒化は、数ミリ程度の粒に土が固まることを指します。団粒化は微生物が糊のような物質を出してコロニーを作ることで起こります。この団粒化は、微生物のエサである炭素資材を入れてさえいれば、団粒化は自然と進んでいきます。団粒化が一つの指標だと考えるとモチベーションが上がりやすいかもしれません。

微生物に任せると健康的に野菜が育つ

植物と微生物は互いに必要な栄養を交換しあって生きています。そのため、微生物を利用した野菜の育て方は「肥料のやりすぎにならない」のです。

わかりやすく言うと

慣行農法などでは「働かない植物に人間が数ヶ月分の食事を一気に提供する」
のに対して
炭素循環農法では「光合成して働いた植物に、微生物が1食分の食事を都度提供する」
という違いがあるのです。

我々人間も、1ヶ月分のおやつが棚にあったら、ついつい食べすぎてしまい、太ってしまったり、体調を崩してしまいますよね。仕事もせずにゴロゴロしているとなおさらです。やっぱり、仕事して丁度いい量の食事を食べるほうが人も健康になりますよね。

実は、野菜にも同じようなことが言えるのです。慣行農法では、農薬は必須と考えられていますが、これは肥料のやりすぎが原因の一つとして考えられています。植物は成長するために「硝酸態窒素(しょうさんたいちっそ)」を蓄えていますが、肥料をやりすぎてしまうと、硝酸態窒素が高濃度になりすぎてしまい、葉や果実から硝酸態窒素分泌してしまいます。

硝酸態窒素を過剰に蓄えた野菜は、大きくはなりますが体が弱くなってしまいます。そのため、病気に弱くなってしまったり、虫がつきやすかったりするのです。虫は、この硝酸態窒素を食べにやってくると言われているほどです。

炭素循環農法では、植物が必要なときに必要なだけの栄養を得られるようになります。それにより、栄養バランスの偏りが少なくなると言われています。そのため、微生物がたくさん繁殖した状態になると、植物は健康的になり、農薬は一切不要になるといわれています。

僕の畑で実験してみたのですが、直前まで自然農法で育てていた畝にインゲンマメを植え、半分は廃菌床を撒き、半分は廃菌床を撒かずに育ててみました。廃菌床を撒いた畑のほうが、豆が大きく育つという結果になりました。葉の色も全然違いますよね。肥料分は一切入れていないのに、結構面白い結果になっていると思います。

炭素循環農法の始め方

炭素循環農法の始めるにはどうすればいいの?という方に向けて、畑の準備や資材の確保なども含め、詳しく解説していきます。

  1. 微生物のエサとなる炭素資材を確保する
  2. 畑を整備する
  3. 炭素資材を撒く&すき込む
  4. 作物(緑肥でも可)を植える
  5. 1作毎に炭素資材を追加する

【その1】微生物のエサとなる炭素資材を確保する

炭素循環農法では、1作毎に1tの炭素資材が必要とされています。畑の準備ももちろん大切ですが、安定した炭素資材の供給がなければ炭素循環農法は成り立ちません。

1反の畑へ、3ヶ月に1回ほど1tの炭素資材を投入するとしても、年間で4tもの資材が必要です。実際、僕の畑みたいに少し広めの家庭菜園(200㎡)程度であっても、1作毎に軽トラ山盛りほどの資材が必要になってきます。だから、炭素資材を供給してもらえるように段取りをしておくことが大切なのです。

手に入る場所があるか心配だな…と思う方も多いかもしれませんが、炭素資材は案外あちこちで手に入ります。炭素資材は廃棄するものであることが多いので、場所さえ見つけてしまえば意外と確保は容易です。

まずは炭素資材について理解して、その後に確保できる場所について見ていきましょう。

炭素資材の定義と種類

炭素資材の定義は「炭素40:窒素1」よりも炭素の割合が高い資材を指します。

これだけ言われてもピンとこないと思いますので、具体的にどんな資材があげられるか見ていきましょう。

改めてお伝えしますが、これらの資材に共通するのが、そのままでは植物に吸収されにくく、分解もされにくいところです。キノコ菌などは他の微生物とは異なり、これらの資材を分解できます。つまり、キノコ菌類しか繁栄できないような状態に人為的にして、微生物の生態系を作るのが「炭素資材の大量投入」というわけです。

炭素資材の入手方法と資材の特徴

筆者の僕も、はじめのうちは炭素資材をあちこち探し回っていました。炭素循環農法について解説しているページは数あれど、資材を分けてくれる場所はあまり記載されていなかったんですよね。

僕があちこち問い合わせて、これまでに炭素資材を入手できるとわかった場所を共有しておきます。

  1. キノコ工場&キノコ農家
  2. リサイクルセンター
  3. ライスセンター
  4. ウッドチッパーを購入して自分で作る
キノコ工場&キノコ農家
ぶなしめじの廃菌床(コーンコブ素材のもの)

まずはじめに紹介するのが「キノコ工場&キノコ農家」です。菌床栽培をしているキノコ工場なら、キノコを育てた培地を収穫後に破棄します。破棄するキノコの培地を「廃菌床」と言いますが、これが炭素資材として最適です。

廃菌床が他の炭素資材と大きく異なるのが、すでにキノコ菌が蔓延した状態になっているところ。つまり、廃菌床は土に入れた瞬間から微生物の繁殖に有効に作用するということです。

ただ、廃菌床の素材にトウモロコシの芯を使った「コーンコブ」が使われている場合は、窒素分が多く、腐敗しやすいので大量に入れるのは控えたほうがいいでしょう。入手する前に菌床の素材にはどんなものを使っているのか聞いてみるのがベストです。

また、廃菌床のキノコ菌は好気性の菌になるので、酸素がないと生きられません。ですので、廃菌床は手に入れたらその日のうちに畑に混ぜてしまわないと使えない状態になってまいます。

そのまま廃菌床を積んだ状態で置いておくと、ドロッドロになったり、カビみたいなものが生えてしまったりするので、すぐ畑に撒くようにしてください。すぐに撒けないのであれば、薄く5cmくらいにしておくのがいいです。

注意すべき点はありますが、廃菌床は炭素循環農法の畑の立ち上げには特に有効なので、手に入る場合は廃菌床の投入からスタートしてみるといいでしょう。

21/9/7追記:廃菌床だけだと、炭素資材の持続性が低いような気がしました。現在は他の炭素資材と組み合わせたほうが良いと感じています。

リサイクルセンター

続いては「リサイクルセンター」です。リサイクルセンターでは、剪定枝や建築廃材、木の根株などの破砕をしています。「〇〇リサイクル」なんて名前なら多分木材を破砕していると思います。不安なら電話してみるといいでしょう。Googleマップでも検索できます。

リサイクルセンターは破砕したチップが多くの場合で、安価に分けてもらうことができます。破砕したチップには「1次破砕」と「2次破砕」の2種類があり、リサイクルセンターによって扱っているものが異なります。2次破砕のほうが、細かく粉砕されているので、2次破砕のチップのほうが扱いやすくておすすめです。

僕が最近よく行っているところは「2次破砕専門のリサイクルセンター」で『軽トラ1杯で200円』です。アオリをつけていても200円(安い!)個人的には一番おすすめの炭素資材です。

木材チップは、後述の「籾殻」よりも糸状菌の食いつきがいいような気がしています。

ライスセンター

稲作をやっている地域なら必ずあるのがライスセンターです。稲刈りシーズンである10月頃になると、ライスセンターからは大量の籾殻がでてきます。もちろんこの籾殻は廃棄されるようなものなので、行けば無料で分けてくれるはずです。

ただ、籾殻は体積比では重量が軽くなってしまうので、必要な分の資材を確保するにはトラックで何度も往復する必要があるでしょう。無料と言われると嬉しく感じてしまいますが、重量が軽すぎる点と、季節が稲刈りシーズン限定になるところがネックです。

ウッドチッパーを購入して自分で作る

自分の所持している土地の竹や木を伐採するのであれば、ウッドチッパーで破砕するのもアリかもしれません。

ただ、それなりのスペックの機械を買おうとすると平気で20万円くらいするのでおすすめはできません。手間もめちゃめちゃかかってしまいます。整備すべき竹林があるのであれば、この選択肢もありかもしれません。

【その2】畑を整備する

炭素循環農法の畑を整備する際に気をつけたいポイントは3つ。

  • 水はけを良くする
  • 肥料を入れない
  • 農薬を使わない

いずれも、微生物の繁殖に必要な要素です。

水はけを良くする

少しだけ高畝にしています

炭素循環農法の要である、キノコ菌たちは水に弱いのが特徴です。キノコ菌は呼吸をしているので、水に浸かってしまうと、たちまち窒息してしまいます。そのため、水はけの悪い土壌というのは炭素循環農法には適しません。

水はけを良くするには、硬盤を破壊するのが一番です。硬盤とは、トラクターが耕せる土の深さよりも少し深いところにできる粘土質の層です。この硬盤があると、水が抜けなくなってしまって水はけが悪くなってしまいます。水田転換畑ならこの硬盤が結構な問題です。炭素循環農法をするなら、この硬盤をユンボやプラソイラーなどの重機を使って壊すというのがベストです。

農家であれば重機があるかもしれませんが、一般の人はそんな機械を持っていませんよね。当然、僕も持っていませんでした。重機を持っていない方におすすめするのが、高畝する手法です。一般的な畑なら高畝にすると思いますが、それだけでも十分です。さらに、ビニールマルチをしてしまうのもいいでしょう。マルチをすれば適度な湿度が保たれる上、過剰に水に浸かってしまう心配もありません。

炭素循環農法で結果を出している石川県で「菜園生活風来」を営む西田栄喜さんは著書で、40cmの高畝にしてマルチを張るとおっしゃっています。雨の多い石川県で、水に弱い炭素循環農法で成功しているのは非常に参考になると思います。

21/9/7追記:黒マルチを試してみたところ、酸素不足なのか糸状菌の繁殖が黒マルチなしの畝よりも遅れている印象がありました。もう少し実験してみます。

余裕があるなら畝間に小さく勾配をつけて、畝間の排水性を高めるのも合わせて行うと良いでしょう。

肥料を入れない

炭素循環農法では、基本的に肥料を入れてはいけません。なぜなら、肥料分があると、微生物の働きが鈍くなってしまうからです。

微生物…というよりも、自然というのは無駄なことはしません。「奇跡のリンゴ」の著者である木村さんも、窒素分が十分にある状態で窒素固定ができる大豆を植えても、大豆の根には根粒菌が発生しなかったとおっしゃっています。

このことから考えると、土の中に栄養分がない状態にして、微生物に仕事を与えてあげることが大切だと言えます。炭素循環農法では、肥料を入れないことが微生物の繁殖にとても大切な要素となるので、生育が悪くても肥料を入れないようにしてください。

農薬を使わない

農薬も微生物の繁殖に影響します。農薬に限らず、薬物は生体の重量に対しての量で効き目が決まってきます。虫よりも遥かに重量が軽い微生物には、虫が死ぬ量の薬剤散布だと、簡単に死んでしまいます。

農薬を使うことが完全にNGというわけではないようですが、農薬を使うと微生物の繁殖を妨げてしまうことは理解しておいたほうがいいでしょう。

【その3】炭素資材を撒く&すき込む

軽トラから木材チップを下ろしてます

畑の排水性をある程度確保できたら、炭素資材を畝の上面に撒いていきます。上面に限定するのは、排水性の問題から。排水性に不安のある畑であっても、畝の上面であれば大抵の場合で雨で水没などのトラブルを避けられるからです。畝間に炭素資材を撒くのは、微生物の団粒化によって排水性が改善されてからでOKだと思います。

炭素資材は「1反当たり=1t(1㎡=1kg)」が最適とされています。が、ちょっとわかりにくいですよね。僕も「測るのは面倒だな~」と思いました。この場合、撒いた炭素資材の重量と厚みで考えるといいです。

廃菌床の場合、比重は0.4程度なので大体2.5mm厚で「1反当たり=1t(1㎡=1kg)」になります。うっすらと表面にまんべんなく廃菌床が撒ければそれでいいと思えばいいでしょう。比重はバケツと体重計を使うと簡単に算出できるので利用する資材を測ってみてください。比重計算は、Webアプリ(ものづくりウェブ)を使うとたぶん失敗しません。

薄っすらと撒いたら、畝の上面10cmくらいの土に炭素資材をすき込むような感じにすればOKです。あまり最初から深くすき込み過ぎてしまうと、微生物が窒息してしまうので、あくまでも土の表面をかる~く混ぜるような感じにしてみてください。このとき耕運機やトラクターを使ってもOKです。

【その4】作物(緑肥でも可)を植える

籾殻を撒いた畝にブロッコリーを定植

炭素循環農法では、作物を常に植えておくことが大切です。慣行農法によくある「石灰と元肥を入れて2週間寝かせる」などの肥料などと土が馴染むまでの期間は不要です。なぜなら、植物を育てるのではなく微生物を育てるのが目的だからです。

実際に、僕の畑では土作りの初期からサニーレタスやサンチュを植えていた畝は、土がふわふわになるスピードが早く、他の畝よりも深くまで土が団粒化しており、微生物の繁殖を肌で感じられています。

植物の根の周辺には、微生物がわんさかと繁殖しています。植物の根から0.3mm離れると、根の表面よりも微生物の量が1/100になり、1.8mm離れると1/1000になるというデータもあるほどです。つまり、植物の根が土中にあることで、微生物の総量が増えやすいのです。

微生物の量が少ない、炭素循環農法の初期段階の畑は植物の成長はあまりよく有りませんし、初期の頃は虫食いなどが多発する可能性が高いです。生育があまりにも悪すぎると感じたら、イネ科の緑肥などを育ててみるといいでしょう。イネ科のソルゴーやライ麦などは硬盤破砕にも使われるほど根の張りが良い植物です。土壌の水はけも改善しながら、微生物の繁殖も手助けしてくれるので、野菜をあわてて育てなくても良い方は試してみてください。

【その5】1作毎に炭素資材を追加する

作物の収穫が終わったら、次の作物を植える前に炭素資材を「反当1t」追加して、立ち上げ時と同じように撹拌させます。長期で栽培する作物の場合だと、段々と炭素資材が減ってくるので、完全になくなる前に上から追加してあげると安心です。

炭素循環農法の豆知識

炭素循環農法は、一般的な農法とはかなり違う部分があります。慣行農法との常識の違いについて解説しておきます。

  • 連作について
  • 立ち上げ初期~中期について

連作について

炭素循環農法は「連作OK」です。連作とは、同じ作物を同じ場所で栽培を繰り返すことです。一般的な慣行農法では、トマトやじゃがいもなどは、連作すると病気の原因になるとされており「連作障害」と呼ばれます。しかし、炭素循環農法では連作NGどころか、連作が推奨されています。

慣行農法等で連作障害がでる要因には、土壌微生物層が貧弱なことが関係しているのではないかと考えています。慣行農法では化学肥料や石灰、農薬などで微生物が減ってしまいます。その結果、その環境に適応した特定の微生物だけが生息するような状況になってしまって、植物の病気につながってしまうのではないかと僕は考えています。

炭素循環農法と同じく、肥料や農薬を使わない「自然農法」などでも、連作はあまり気にしません。つまり、土壌の微生物を増やす方向の農法であれば、連作に関しては気にしなくてもいい…ということになるのだと僕はなると考えています。

ただし、炭素循環農法の場合は、窒素分を土中に固定してしまうマメ科だけは連作はいけません。連作をしてしまうと窒素が過剰になってしまい、キノコ菌などの繁殖が妨げられてしまうからです。土壌中に窒素固定ができるマメ科のあとには、別の作物を植えるようにしましょう。

立ち上げ初期~中期について

炭素循環農法では、立ち上げ初期~中期は野菜の生育が安定しません。理由は単純で、微生物が土の中に蔓延しきっていないからです。

炭素循環農法の提唱者である林さん林さんのHPは、準備期間だけでも0ヶ月~12ヶ月ほどが必要だとおっしゃってます。長年耕作放棄地であった畑や自然農法で育てていた畑は、もともと微生物量が多いので、立ち上がりが早くなるようですが、慣行農法の場合は微生物量が少ないので、立ち上がりに時間がかかるようです。

また、炭素循環農法で土が変わっていくのは表層に近い部分からです。そのため、根が浅い野菜のほうが早く育ちやすくなると言われています。短期間で収穫できる葉物野菜がもっとも早く、安定した成長を見せるようです。反対に、長期間育てることになる果菜類などは、安定した成長を見せるまでには時間がかかるらしいです。

また、立ち上げが完了するまでは、野菜の虫食いがひどくなる傾向にあります。特にアブラナ科は虫食いがひどくなりやすく、大根や小松菜などは、凄まじく虫に食べられます。

21/9/7追記:アブラナ科の野菜は半年たった今も虫食いがひどく、思うように成長しません。ただ、成長の速度は明らかに早くなっています。もう少し我慢すれば変化が訪れるような気がしています。

そういうものだと思って、過度な期待をせずに気長にチャレンジしたほうがいいと思います。ただ、炭素循環農法をスタートさせると、土が変わっていくのが目で見てはっきりわかるので結構楽しいですよ。

炭素循環農法初期におすすめの野菜

僕が実際に炭素循環農法を始めてみて、立ち上げ初期でも作りやすいと思った野菜について紹介します。

  • キク科
  • ネギ類
  • いちご
  • マメ科

ざっと言うとこんな感じです。アブラナ科は初期にはおすすめしません。半年たった今でもアブラナ科はものすごく虫に食われます。

キク科

キクナやサニーレタス、サンチュなどは立ち上げ初期でも作りやすかったです。生育はゆっくりですが、虫食いもほとんどないので、植え付ければ収穫まではたどりつけるように思います。

ネギ

廃菌床と木材チップだけすき込んだ畑では、かなり順調にネギが育っています。ネギは虫食いもないですし、ほっとくだけで濃い緑色になってきます。微生物による団粒化で水はけがよくなるのもポイントなのかもしれません。ただ、苗の段階ではネキリムシに結構やられました。それ以外は慣行農法の畑よりも順調です。

いちご

イチゴもなにもしなくても実が付きました。葉が少しだけ虫食いにあっていますが、それ以外は全然気になりませんでした。木材チップを表面に掛けてあげれば、泥はねなんかも気にならないので栽培しやすいです。

炭素循環農法1年目での果菜類の栽培結果:21/9/7追記

炭素循環農法では、1年目に果菜類の栽培は難しいとのことでしたが、耕作放棄地だった私の畑では半年程であっても栽培できたものが多かったです。

トマト、ズッキーニ、ピーマン、ナス、オクラ、シシトウ、タカノツメなどは一応作ることができました。ただし、ある程度収穫できると調子が落ちたり、妙な腐りがでるものも多かったです。いずれの果菜類も成長はゆっくりで、葉の大きさや枚数は化学肥料で育てていたときよりも明らかに少ないように感じています。

ウリハムシにやられやすいズッキーニやきゅうりは、すぐに虫食いにあってしまい失速しています。

根が糸状菌?に食われて枯れたピーマン

2021年の能登の夏は異常な程雨が少なく、ほとんどの野菜の調子が悪くなってしまいました。中でもピーマンは、干ばつ後に根が糸状菌?に食われてしまい枯れてしまいました。植物も免疫力が落ちると微生物に食われてしまうのだと実感した一件でした。

個人的にはアブラナ科の葉物類のほうがよっぽど難しいという印象です。(無農薬だと)

炭素循環農法と害虫

炭素循環農法で半年間畑を運営してみて、困った害虫についてもかんたんに紹介しておきます。
特に対策をしているわけではないので未だに被害にはあっています(笑)もう少し環境が変化して収まってくればラッキーくらいに考えています。

ネキリムシ(カブラヤガ)

果菜類の苗を定植したり、ネギをバッタバッタとなぎ倒していくのがこのネキリムシです。耕運機を使って耕すようになってから被害は極端に減りました。クワで耕しているのであれば注意したほうがいいでしょう。

ネキリムシは、土が完全な発酵型になるといなくなる…と、炭素循環農法の提唱者である林さんはおっしゃっているので、もう少し様子を見てみようと思っています。

来年は、苗を定植したらペットボトルを輪切りにしたものでガードしてみようかなと思っています。

キスジノミハムシ

アブラナ科の葉を食べに来るのは、このキスジノミハムシです。

2mmくらいの小さな虫で、大きく食害するわけではないのですが、小さな穴をたくさんあけていきます。

ただ、春先よりも9月の被害はマシになった気がしています。季節差なのか土作りの差なのかはわかりませんが、来春に結果がでると考えています。

トビイロシワアリ

ブロッコリーや大根などの幼苗の根、大豆や落花生などの種などを食い荒らされました。

コーンコブの原料を使っている廃菌床を食べ集まってくるという仮説もありますが、はっきりしていません。

カメムシ

果菜類やマメ類によくついているのがカメムシです。どこまでがカメムシの被害なのかはよくわかりませんが、しょっちゅう目に止まります。

まとめとおさらい

まとめると、一番最初の画像の形になります。

水はけを良くして、炭素資材(1㎡=1kg)を混ぜて、何らかの作物をすぐに植えるようにしてみてください。時間はかかるかもしれませんが、これで野菜は育ってしまいます。最初は廃菌床がベストですが、木材チップなどでも問題ありません。自然とキノコ菌は増えてきます。

最後に、微生物で野菜を育てる方法について、僕が参考にしている「ガッテン農法/三浦伸章」を紹介しておきます。こちらの書籍は、炭素循環農法ではないものの、土壌微生物の活性化に着目した野菜の育て方を解説している書籍です。微生物の増やし方については手法が異なるものの、炭素循環農法と非常に似た考え方をしています。

各種野菜の育て方について、僕はこちらの書籍に記載されている方法を参考にしているので、興味のある方はチェックしてみてください。

また、筆者の運営しているシェアハウスほくほく邸では、炭素循環農法で作った野菜が食べられます。まだまだ土作りはこれからですが、ナスやピーマン、キュウリ、ダイコン、リーフレタス類、いちご、サトイモ、空芯菜などなど様々な野菜を作っています。気になる方はトップページから概要をチェックしてみてくださいね。